『il tempo vola』とはどんな店なのか

青梅駅から10分ほど歩いたところに清宝院という寺がある。その裏手に、『il tempo vola』という店がある。
店の車には石窯ピザと書いてあるし、確かにピザは出てくるのだが、「ピザ屋なのか」と問われると「否」と答えるほかない。
この店は『il tempo vola』であって、ピザ屋ではない。よしんばイタ飯店などでは決してない。看板にはcaféと書いてあるし、店には酒もわりとあるのでcafé&barなのかと言われると、それも違う気がする。”il tempo vola”は”Time flies” という意味だが、”…like an arrow.”ではなく、店の看板にも描かれているトンボのように時間が「飛ぶ」、そんな店。

この店を最初に知ったのは不定期にイベントなどをやっている『yard』さんが作った青梅マップに載っていたのを見て。地図で見なければこの場所に店があるとは誰も思わないような場所にある。
「へ~、こんなとこに店があったのか!」といつか行こうとは思っていたのだけど、『ネジマキ雲』の休店間近の1月のある日、オーナー・ネジ君に薦められた。「万人向けとは言い難いですが…」という枕句つきだったので、それは行ってみねばなるまいと二日後の良く晴れた昼に行ってみた。

ちょうど青梅駅前ではだるま市をやっていた日で、1月12日。いちおう開店は11:30からということになっているのだけど、その時間に着いてみるとオーナーの女性が開店準備をしていた。「まだちょっと待って~!」というので、お寺を見て、ほんの少しだけ咲き始めた梅を楽しんで開店を待った。

店先ではちいさな皿に黒い種が盛られている。何かと思って訊いてみると「カラスウリの種は大黒天の形をしていて、財布に入れると御利益があるとかで、おすそわけ」だそうだ。お隣の清宝院には青梅の七福神の一つ・恵比寿様の社もあるが、恵比寿と大黒のコンビはなかなか利殖によさそうだ。「大黒天の形」というのはようするに男性器の形なのだが、なるほどそんな形をしていた。おもしろい。

少し待ったら準備が整ったようなので、お店に入る。
平屋を改造した店内は落ち着いた内装で、ネジ君が気に入るのも納得。
ネジ君から言われていた注意点は二つ。「メニューにあるものがあるとは限らない」「出されたものを食べるべし、頼んでないものが出てきたことすらある」

頼んだのはハーフ&ハーフ(こういうところ、チェーン店用語は便利である)で、「枯露柿とブルーチーズのピザ」「葱とアンチョビのピザ」。これしかないと言うので。どっちも絶品だった。どのみち僕はなんでも食べるので、迷わずに済んで嬉しかったのだけど、確かにこの店は人を選ぶ。

枯露柿とブルーチーズ

葱とアンチョビ

コーヒーはネジマキ雲の焙煎豆もあって嬉しい。ただ、仕事の合間にランチを食べに行く店ではない。現にこの日は12時前に入って、ごちそうさまをしたのが2時近かった。贅沢な時間の使い方ができる日に、「昼下がり」を楽しむか、夜が良さそう。酒やビールの銘柄も気になるものがある。あるものしかないが、あるものはおいしい、そういう店だ。

店内には漫画が多く置いてある。「度胸星」「Spirit of Wonder」「AKIRA」…僕の目が悪いだけかもしれないが、SFが多いような?「弥次喜多 in DEEP」もあった。

後日夜に行ったときに出てきた、鳥のもつ煮。

行くたびにオーナーと長話をして帰ってくるのだが、材料にも気を遣っていて、極力手作りという点でもとても安心できる店である。合わない人には合わないが、合う人にはたまらない店だろうな。三日後に行ったときはまた同じメニューしかなかったけど:-)、二月に入ったら豆腐とか牡蠣とかも出てきた。また行かなきゃ。

ホームページ
il tempo vola
地図
東京都青梅市大柳町1203
月曜定休。営業日でも、まず電話してやっているか確かめたほうがいいかも…。席数は少ないので、4人以上の大人数も問い合わせたほうがベター。また、好き嫌いの多い人、せっかちな人はやめておこう。食べたいものが食べたいときに出てくるとは限らない。