山奥にひっそりどっしり佇む古本店『古書ワルツ』

「なぜこんなところに?」訪れた人のほとんどがそう言うであろう青梅の山奥に、いかした古本屋をみつけた。
名前を『古書ワルツ』という。

ご近所には『オシドリ良品店』という器と雑貨のお店があり、どちらも「なぜあんなところに」と青梅界隈や国立あたりの雑貨店でもちょっとした話題になっているほどだ。
「青梅の山奥の、めちゃくちゃ辺鄙なところに器の店があるらしい」「その近所の古本屋がスゴイらしい」。この二店はいつもセットで話題になる。

西多摩の古本店は、「ブックスーパーいとう」などの大型チェーンに押され、それ以外の新規出店がほとんどない。もともと数が少ないのでほとんど壊滅したと言ってよい状況だ。早稲田や神田などで見られるような「得意分野のある古本店」ということになると、もはや望む方がどうかしている、と思っていた。しかし。

一月に『オシドリ良品店』に伺ったついでに、覗いてみた。
まずその古本屋らしからぬ佇まいにハテナマークが出る。確かに「古書ワルツ」と書かれていて、バイクのガレージショップかと思うような店先には未整理の本が山と積まれているのだが…。ほんとに古本店なのか?

ズズズッと赤い扉を引いて中に入ると、広い。
入って直ぐのエリアは安い本と文庫のエリア。ここは基本的にあまり整理されてない。なぜかこけしの大群と器が置いてあるが…これはなんなのか謎。

奥のエリアが本丸。これはちょっとした図書館か、誰か書籍蒐集家の本棚を見せてもらっている気になるくらいの、本好きなら小躍りしてしまうようなスペースだ。
吉祥寺「百年」や西荻窪「のまど」に匹敵するわくわく感がある。しかも広い。
本棚ごとにかなり偏った蔵書が並んでいて、「なんでもある」というわけではない。たとえば小説などの文庫本や最近の漫画などはほとんどない。(今のところ僕がワルツで見た一番最近の漫画家は諸星大二郎と星野之宣だった。)
神学、音楽、戯曲・演劇・映画、哲学、写真、漫画(田河水泡・諸星大二郎、手塚治虫ほか)、民俗学、あたりが主なところだろうか。うーん、こうして並べると結構なんでもあるように見えるな。でも本棚を見ると「なんでもある」という印象はなく、「あるものしかない」という印象を受ける。バイヤーの志向性が強く感じられ、とても心地よいのだ。奥のエリアには良い本が多いので、欲しいなと思う本はなかなかぐっとくる値付けだったりするわけで、意志の弱い人間は財布を太らせて行くべきである。

店をやっているのは意外にも(失礼)僕と同じくらいの年齢の若い方たちで、どうしても訊かずにはいられなかった「なぜここで」という問いには、納得のいく答えが返ってきた。取引の中心はネット販売で、店賃と蔵書を置くスペースのバランスを取ったらここらへんに落ち着いた、ということらしい。

『オシドリ良品店』が二月は冬季休業していたので、こちらも二月は土日のみ営業だったようだ。三月からはどちらも通常営業。

さて、ホームページのご紹介。
古書ワルツ
上はネット販売の通販サイト。ブログ『ワルツ通信』の「お店の紹介」カテゴリーが猫写真だらけでカオス。超かわいい。
ご近所のオシドリ良品店はこちら。

青梅駅から山を越え、旧トンネルが心霊スポットとして有名(ただ古くて暗いだけ)な吹上トンネルを抜けると、軍畑方面(雷電山コース)と名栗湖へ向かう交差点がある。そのトンネル出口と交差点の間の細い道を右に入ってすぐ左。
営業していれば、トンネルを出てすぐ右手にちいさな看板が出ている。

東京都青梅市成木8-33-2

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