邪宗門と国立

邪宗門のマスター名和さんがお亡くなりになったそうだ。
僕の住んでいる国立という町を誰かが語ると必ずこの方の名前が出てくる。戦後50余年をこの町とともに生き、この町を作った。邪宗門は内装やマスターその人の人生哲学、風貌、人柄とともに語られることが多いが、僕はこの店とマスターのコーヒーに対する姿勢がとても好きだった。しっかりとしたコーヒーなのだ。僕の好みど真ん中の味ではないのだが、何度飲んでもおいしい。フィルターも自分で作る(*1)というアグレッシブさがありながら、店ではその喧伝はしない。それは喫茶店としてストーリーよりも客とコーヒーのひとときを大事にするということではなかっただろうか。その刹那のためには変わらずに在るということが大事で、確かに邪宗門はいつも変わらずそこに在った。

ロージナの初代マスターが亡くなり、
三角屋根の駅舎が無くなり、
うなちゃんも新しいビルに入る。
国立の駅前が少しずつ変わっていく。

国立には国道20号甲州街道が通るが、甲州街道から国立市街へ入る道は細く、とてもわかりにくい。東八道路、新奥多摩街道の延長線上にありながら繋がれていない桜通りを地図で見ると、意図的なものを感じないでもない。
そうやって時間の流れを堰き止めているこの町にも、確実に時間は流れている・・・
今できることを後回しにしていてはいけないね。

*1 新聞で読んだだけでご本人に聞いたわけではないのであしからず