唐組2009年公演「盲導犬」

0910_karagumi01父a.k.a.キムチと唐組の舞台に行ってきた。井の頭公園はジブリ美術館横に張られた紅テント。去年と変わらぬたたずまい。
僕は演劇鑑賞の経験が少ないので、観劇の最初にある種のチューニングが必要だ。初めて見る劇団の場合とくに、舞台のコードとリズムを把握する(のに努める)時間が要る。もしこのチューニングを怠ったり失敗したりすると、公演中おいてけぼりを食ったままになってしまう。同じ劇団で二度目ともなるとその儀式があってもごく短くて済むので、今回はスムーズに入ることができた。

今年の演目は「盲導犬」。1973年に蜷川幸夫の劇団で初演されたものだそう。僕は初見なので、特に古くささを感じたわけではないのだが、やはり平田オリザほかの静かな演劇が出てくる線上に彼らのアングラ劇もいたのだと思わされるものはあった。
唐組主宰の唐十郎というひとはしょっちゅう喧嘩沙汰を起こしていて、武闘派として知られていたそうだ。
「小林薫が状況劇場を退団したいと言う話を聞き、小林の事を高く評価していた唐は、退団しないよう説得をしに、包丁持参で小林の住んでいたアパートに行くが、先に小林が逃げ出していた為、説得は失敗し、結果小林の退団をなし崩しに認めてしまった(Wikipediaより)」
よく意味がわからない。
唐十郎は1940年生なので、いまや70になんなんとする。今のその風貌をぱっと見ただけでは顔の丸いやさしそうなおじいさんに見えるのだが、そういう話を聞いて見るとたしかに目のギラギラが尋常ではなく見えてくるから不思議だ。

「盲導犬」という舞台の内容についてはまだよくわからない。
はぐれてしまったファキイルという猛々しき盲導犬を探す盲人がおり、新宿駅東口のコインロッカーの中に封じられた過去の恋人への想いを取り出し南の島で死んだ亡夫のくびきから逃れようとする未亡人がおり。この二者を中心に話が展開していくのだが、最終的に未亡人は亡夫の幽霊に盲導犬の胴輪をつけられてしまい、ようやく開いたコインロッカー330(操)番から飛び出したのは夫が射殺された南の島バンコクと日本とのあいだに横たわる海、そしてファキイル。盲人はその未亡人の胴輪を外そうとするのだがファキイルには会えずにテントが開放され、閉幕。
盲導犬は服従のメタファ、ファキイルは不服従のメタファであるのはいいのだが、盲人は登場人物の一人である不良少年を男色の相手として手込めにし、服従の相手を見つけたようである。未亡人は亡夫への服従を条件にロッカーの鍵を手に入れファキイルを見いだすが、果たしてそれは解放であったのか・・・

舞台は1時間半ほどの短いもので、とちゅう1時間ほどのところで休憩を挟んだが椅子席(ちょっとしかない)に座れたし楽だった。最前列端に柄本明がいたけど、去年僕もあの近辺に座り、見づらかったのを思い出した。ラストでは前回の「ジャガーの眼」にひきつづき舞台裏が解放される。紅テントではいつもこうなのだろうか。キムチに訊くのを忘れた。井の頭公園のこの原っぱでは裏手が広いのに暗く、なかなか開放感がある。鬼子母神ではこうはいかなかったのではないかと思う。

前回は自転車だったが今回は車で行ったので、帰りに国立で「にんにくや」に寄った。19時開店で2:00までやっている夜型ラーメン店。ここのラーメンはさっぱりとしていてうまい。チャーシューもうまい。まっこう屋と人気を二分するが、こってり系が苦手な人は絶対こっちだろう。どっちもいける僕でもこちらに行く。引っ越し作業中に知ったのだが、もっと早く知りたかったな…車で通うけど。おっちゃんが一人でやっているのだが、このあいだチャーシューともやし(どっちも絶品だった)をおみやげにもらったお礼を言うと、チャーシューになる前の豚肩ロースをもらってしまった。ナツメグを使って唐揚げにするとうまいよ!と聞いたのでやってみよう。

ローカルの話題で申し訳ないが、むっさ21内の酒屋:広島屋さんでは土日の昼間に酒盛りをやるらしい。にんにくやのおっちゃんもチャーシューのハネを提供すると言ってた。これは行かないと!しかし電車だな。

“唐組2009年公演「盲導犬」” への2件の返信

  1.  芝居は乱雑な展開なのに、さすがによく観取れています。
    舞台の終幕がテント裏への解放という演出は、紅テントならではの効果で、すべての作品で続いているようです。
     かつての芝居(何だったか忘れた)の終幕ではざあっと開かれたテントの向こうに、サラリーマンを乗せた通勤電車がちょうど高架線を走行していたり、大型重機クレーン車でヒロインが闇の夜空に高く舞い上がったり、印象深いものがたくさんありました。

    ラーメン旨かったねえ。

  2. テントが開くのは「テントならでは」ですね。昨年に続きふたつ見たわけですが、屋内でも屋外でもない狭間の空間というのは唐十郎の戯曲に合ってるのかもしれませんねえ。
    通勤電車が見えるってのはいいなあ。