オルセー美術館コレクション特別展

日曜日が最終日だったので、上野の国立博物館で催されていた「オルセー美術館コレクション特別展 フランスが夢見た日本―陶器に写した北斎、広重」を見てきた。最終日ということでさすがに人は入っていたが、会期中はわりと閑散としていたそう。まあ、皿だしね。
展示の内容は18年代半ばのフランスで販売された「セルヴィス・ルソー」と「セルヴィス・ランベール」というブランドの皿と、その絵のネタ元になっている北斎や広重の資料とで構成されていた。写真を見て「欲しい」と思ったのと、トリミングとサンプリングの勉強になりそうだったので行くことにしたのだが、さすがにレプリカなどは売っておらず残念。勉強としてはなかなかよい実例だった。ここまで堂々とパクったら現代では訴訟もの。しかも北斎・広重という大物遣い。「ルソー」は皿の形も様々で楽しめたが、基本的には元ネタの絵手本(今で言えばイラスト・カット集みたいなもの)からカットを切り出し、皿の上や下に配置していくサンプリング的手法。大量生産品なので絵としては鈍い。植物・魚・虫という組み合わせが多く、食事を盛る皿の上に蛾やアリを堂々と配しているのはすごかったが、フランスの版画家が見たことがなかったであろう魚介類や昆虫を独自の解釈で(勝手に)彩色しているのは、アジアとヨーロッパの当時の隔たりを夢想させると言えなくもないか。
「ランベール」のほうは一点ものの絵付けなので絵画をそのまま模写したものが多いもののトリミングがうまく、元ネタの絵よりも効果的な配置換え・トリミングを施されているものも散見された。また人物画から人物を廃し背景だけを持ってきていたり、元ネタの作者が見たら激怒しそうなトリミングを堂々と行っているのは時代の為せる業。とはいえ、皿自体は画一的で(飾られる用途での皿だったらしい、)模写の精度があがり元ネタも絵画なので「ルソー」のような驚きは少ない。