Sector9 Sidewinder Sand Wedge インプレッション

Sand WedgeDeck 8 Ply Concave Maple / 38.5″ L x 9.10″ W
Trucks Gullwing Sidewinder Trucks
Wheels 69mm 9-Ball Slalom Wheels (75a)
Bearings  Greaseball Bearings: Abec 5

dsc_1417.JPG上のスペックはコンプリートの購入時ママ。GravityにThrusterシステムがあるならSector9にはSidewinderがある。Carverがなんとなく売れ、「荷重移動が下手でも曲がるトラック」が人気となったサーフスケート業界に最後に参入したトラックがSidewinderだ。個人的には平地ゼロスタートできるようなバネ推進トラックは百害あって一利なしと思うので、Sidewinderの「曲がればいいんだろ」的な回答は好感を持っていた。

Sector9 Sand Wedgeこの板は08モデルで、トラック自体はたぶん07モデルと変わっていないが従来のSidewinder搭載モデルより板が長いのと、Sidewinderの弱点である車高の高さを解決するために板にトラックがすっぽり収まる穴を開けてしまうという無茶をしているのが特徴。8Plyの合板は赤と緑の差し色が入り、見た目も美しい。デッキ(板)はコンケイブ(進行方向に板の断面を見たとき、中央部分が窪んだ形の「反り」。足の横方向の滑りを防止し、荷重移動によるコントロールを得やすくする。)が入り、キック(横から板の断面を見たとき、左右の端が鉛直方向上に向かう「反り」。ウイリーしたり、ショートであればオーリー[≒ジャンプ]するときに利用する。)なし。メープル8Ply(カエデ材の8枚合板)なのでCR2などのファイバー混の合板よりも少し厚い。また横から見たときもCR2のようなカーブは描かず、平坦。コンケイブの存在もあり、剛性の強い板に乗っている感じが心地よい。その分板のたわみをコントロールする繊細さは無く、CR2に慣れている人はさびしく感じるかもしれない。僕がまさにそれで、キックもないので歩道に乗り上げるのも最初は難しく、曲がるだけの板という印象がいまだに抜け切っていない。

もうひとつの特徴を忘れていた。このボードはなんと自立する。フロントを下に立ててやると、三点倒立の要領で自立し倒れないのだ。CR2もかなり前にトラックが配置されているが、自立はしなかった。(CR2は現在はRandallに履き替えているためウィールがかなり後ろへセットされている。)

最大の謎はウィールバイト(Wheel が板と干渉して止まること)してないのにホイールロックすることだった。最初は慣れないサンタモニカのコンクリート舗装のせいだと思っていたのだが、後から思い出すにつけあの滑らかな舗装でひっかかるものだろうかという思いが募る。曲がりすぎでロックしていたと思い、最初そうエントリーに書いたのだが、今日乗ってみたところ正解が判明した。このトラックは大変曲がりやすい。そして車高をかなり低くしている。普通の板であれば曲がるトラックをつけたときはウィールバイトを避けるためライザーパッドという車高を高くするパーツを入れるほどで、そこをさらに車高を下げているのだからウィールバイトは必至のように思える。しかしウィールバイトはしない。Sector9がこれをどう解決したかというと、先端にいくにつれ細くなっていくボードの、まさに先端にトラックを配置したのだ。結果としてトラックより前の頭の部分がほとんどなくなり、前述の三点倒立も可能になった。さて、スラローム/ポンピングをするとき、僕は前トラックのすぐ下あたりに前足を置くのだが、これはスタンスとしては普通~若干前だと思う。後ろの足も後トラックのあたりが普通だろう。そこでターンをするとどういうことが起こるか。ボードはウィールをバイトしないが、細くなっているボードからはみ出た靴底がウィールをバイトしてしまうのだ。ウィールバイトは急ブレーキがかかるので危険だが、それでも摩擦係数の少ないボード表面でこするため、ある程度の制御は可能だ。しかしサンタモニカで転んだときは急ブレーキというよりは何か見えない縁石にでもぶつかったかのように(しかしそれでいて板には全く衝撃が無く)僕の体が宙を飛んだ。あれはvibramソールのMERRELを履いていたために、登山用靴のソールと75aの柔らかいウィールという高摩擦係数のオブジェクト衝突で起こった急制動だったのだ。やっと原因が判明してほっとしたが、これが分かればもうウィールロックはしない、かと言うとそうでもない。プッシュせずに進むためにはポンピングが欠かせず、そのためにはスタンスはこの位置が最適だろうし、ポンピングのターン時にはエッジを押さえこむことで強い荷重をかけるため、どうしてもソールは板の外に出てしまう。どうしたものか・・・。僕が下手なだけなら直せばいいのだが、これはスペースの問題なのでどうしようもない気がする。

板に穴をくりぬいてまで車高を低くした割には曲がりすぎ柔らかすぎでダウンヒルには使えない、かといってスラローム/ポンピングでぐいぐい進もうとするとソールにヒットしてウィールロックする。すべては「曲げなくてはいけない」という至上命題が悪い結果を生んでいるような気がしてならない。走行音がほとんどない点は評価できる。柔らかいウィールのせいもあるが板に穴が開いているため垂直方向のトラックの突き上げが板に直接当たらず、結果的に恐ろしいまでの静音マシンとなっている。そのへんのママチャリよりよほど静かなのではないだろうか。夜コンビニに行くだけならかなりおすすめできる。

(追記)

手元のCR2と較べてみると車高は若干低い程度だが、プッシュ時の高さはかなり違う。CR2は横から見て断面が上ぞりしているため、荷重が減るプッシュ時にはかなり高くなるのに対し、SWのほうは足がコンケイブの底にあたるためかなりの差を感じる。またCR2には手製のゴムクッションのみでライザーを入れてないので、CR2にライザーを入れたらもう少し差が出るだろう。

板の長さはほとんど変わらないが、後トラックの配置がSWのほうがかなり後方に置かれている。CR2+Randallでは後ウィールが靴ソールと干渉することはないが、SWはそれが心配される分、トラック間の距離をとっているのかもしれない。そのため後ろで干渉することは少ないように思える。問題は前トラックだ。よく曲がるのは確かで、極端な荷重移動をしなくても簡単に前に進んでいく。こういう乗り方をするものなのだと思えば前足の位置を意識しながら乗ることは可能だと思う。しかし気分が良くないんだよなあ。もう少しゴツくない靴を履けば安心できるのだろうか。名機と呼ばれるCR2と比較してしまうと、今一歩といった感は拭えないのが現状だ。

(追記2)
その後スケート用の靴を履き、あまりエッジに乗せない漕ぎ方をすることで、ポンピングしてもウィールロックすることは無くなった。コンケイブがあるのでCR2よりも足裏全体で踏める。こうやって乗るのが正解なのだと思う。でかい靴の上ソールが凸凹している登山靴なんかで乗るものではないなあ。
ちなみにこの板は確か210ドル弱だった。日本でもネット通販であればかなり近い値段で売っている。Oshman’sあたりで4万も出して買うモンじゃないけれど、2万ちょっとなら買った瞬間からセッティングが終了しているコンプリートボードとして評価できるのではないかと思う。トラックを変えることはできないし、ウィールもABEC11 Flashbackに近いので、ウィールを固くしたいという向き以外には特に変える部分が見あたらない。CR2を買って標準のGullwingに幻滅してRandallとFlashbackやNo Skoolzを買っていると+1~2万は確実なので、安上がりなのは事実だし、穴が空いているにしては剛性のあるボードによく曲がるいいトラックであることは確かだ。CR2の癖が事故の原因だったので、最初からこれに乗る人は苦もなくなれることができるだろう。どうせ4~5回は転ぶんだし。