アンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』と原作者レムの『ソラリスの陽の下に』は、小学生であった僕に当時の東側世界の空気を感じさせてくれた窓のようなものであった。僕にとってはソラリスの開けた閉塞感とでも言える空気はテレビから伝えられる冷戦時のソ連や東欧の国々のニュースよりは遙かにそこに住む人間を感じられたのだ。悲しくも美しいストーリーと映像、そして最後に滲むひとかけらの希望あるいは安堵は、SFを通じて西側世界の人間が楽しむ「未来」とは違う「未来」を彼ら東欧人が見ていたことの証左なのではなかっただろうか。
今やソ連はなく、ポーランドも社会主義を脱した。今のロシアそしてポーランドはレム翁の目にはどう映っていたのだろうか。
人々がよりよい社会を目指す試みはこれからも行われていくことだろう。ともすればトラウマに二の足を踏んでしまいそうになるが、願わくはソビエト的社会主義の遺した苦い後味が大切な教訓として生きていきますように。
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レム逝去の報に接してそのようなことを考えていたのだけれど、最近リメイクされた「ソラリス」はあるのに「惑星ソラリス」がレンタルビデオ店GEOに無い。新しい作品はどんどん入れるくせに…。
そんなわけでDVD購入。猿の惑星とのセットのほうが安かったのでそちらを。猿の惑星はあまり好きじゃないけどね。