メイド喫茶デビューの顛末

そんで、行ってきたんですよ、メイド喫茶。
有村の先輩のオーナーさんはいなくて、男三人完全にアウェー戦。
前日あまりに恐ろしくて朝五時まで一人酒を煽ってしまい、寝不足+二日酔いのバッドコンディションで臨んだ僕は糞まずいコーヒーに催してしまった嘔吐感を抑えるのに必死で、完全に鑑賞者としての行動しかできなかった。主体的に楽しめなかったのは心残りではある。

客がすごかった。眉間に皺を寄せてうつむき加減で一点を見つめる人、なぜかCanCanを読みふける人、異様に緊張している編集風の連れの女の子をほったらかしでメイドさんと会話しまくる人、かみ合わないアニメ話を続ける男二人、メイドさんと仲良くして常連っぷりを大声でアピールする人、ずっとノートPCをいじっている人・・・

店員は確かにメイドだが、メディアで紹介されるような極度のロールプレイはなかったように思う。ひざまずいて紅茶やコーヒーに入れる砂糖をかき混ぜてくれるくらいか。当然断った。彼女たちのオーラはまさにコスプレイヤーのそれで、利害関係の一致しない立場に立っている生物であると認識した。これが「種族が違う」というやつか。ほとんど喋っていないが、目つきやしぐさなど、なんとなく宗教にハマっている人に相対する印象に近い気がする。

客と店員の交換日記のようなノートがあり、これを読ませてもらった。
怒濤の書き込み。これは愛の記録だ。まずメイドさんを褒める。恋するメイドさんに少しでも自分のことを知ってもらおうと、自分の紹介(さりげなく)や好きなアニメや好きな音楽の紹介が続く。自分のホームページアドレス、メールアドレスを載せる。そして「書きすぎましたごめんなさい」とセルフフォロー。「○○に書けと言われて書いています」という言い訳もそこここに。いいぜこれは。すげえぜお前ら。逃げながら攻めるその姿勢をかつて僕は愛したのであったと唐突に思い出して泣きそうになった。

オタクの世界は確かに排他的で、他人の目をあまり考えない方向に欲望を追求しているその姿は、周囲の目を気にする社会的な人間から見ると奇妙で気持ち悪く異常に見える。しかし彼らは自分たちの欲求にピュアだし、事実ここで行われていることはキャバクラ内のそれとほとんど変わりない。
この世界を気持ち悪いといって拒絶するのは簡単だ。しかし、そこには進歩がないと思うのだ。オタクが、オタクのためのキャバクラを作った。キャバクラに行くような人間がそれを否定する権利はない。

店内には30分ほどもいただろうか。下崎は全く役に立たず、有村はそれなりに楽しんでしまったようで、僕らの試みは終了。出てすぐにコンビニでソルマックを飲んだ。不完全燃焼ではあったが完全燃焼するような燃料もなかったので、そのまま下崎のPCを二台買い、僕のキーボードを買い(Happy Hacking Keyboard L2;まだ慣れない)、帰ってきた。

感想をあやに訊かれ(当初はあやも行くはずだった)、いろいろ説明をしていたのだが、唐突に僕の腹の底から湧き出てきた言葉があった。自分自身予想していなかった言葉で、驚いた。しかしこれが素直な感想であったのかも知れない。

「きもかったんだよ!!!!」

この言葉を発してしまったという事実は しばらく僕の心を責めると思う。せめて「キャバクラと同じくらい」という修飾句をつけたかった。

“メイド喫茶デビューの顛末” への2件の返信

  1. 感想を一言で述べるなら、
    「小谷君もお年を召されましたね」、と(笑)

    まぁ正直冷やかしにもならないんじゃないかとは思っていたけどね。
    もしあの当時の勢いで書かれたら一体どういう結果になったか興味なくもないけど、
    でもやっぱり怖いんで、これで良かったんだと思います。はい。

  2. 僕が丸くなったと言いたいのかい
    確かに腹は出てきたが、
    気持ちはあの頃とあまり変わってないのだ。
    あのサイトは本当は愛に満ちていたのに
    あまり理解されなかったのが悲しいところなのです。

    ところで明日なんですが仕事が急に入ってしまい、午前中か18時以降じゃないと体が空かない。手伝いに行きたかったんだが、、夜でもよければ言って下さい。