book:揺籃の星

なんだか近所の古本屋が僕の購買パターンを知ったのか、創元SF文庫のJ・P・ホーガンが大量に補充されていた。ハヤカワSFも結構増えてきた。ぜひニーヴンを補充して欲しいところだ。
ホーガンについてはガニメデ三部作に加え「創世記機械」まで読んでしまい、いいところも悪いところも(どちらかと言えば悪いところが)見えてきて食傷気味ではあったのだけど、「ハード+パニックSF」という帯の文字にB級SF好きの血が騒いでしまいついレジに持っていってしまった。これはホーガンの邦訳済みでは最新作で、「金星は木星から生まれた彗星だった」というネタを背骨に持つ。元ネタについては少々うるさいが版元に解説が載っているのでそちらをどうぞ。

読んでみると、ホーガンでは「星を継ぐもの」と匹敵するほど読ませる。読みやすくスムーズに話を進めほころびを見せないあたり、こちらのほうに軍配を上げたいという気もする。しかしクライトンばりのパニックアクション小説としてのあざとい狙いが見え見えではあるし、「月面で発見された真っ赤な宇宙服を来た人間は、5万年前に死んでいた」という背筋がぞくっとするようなミステリーで幕を開けた「星を継ぐもの」と較べてしまうと、こまごまとした部分の高い完成度を考慮してもやはり今一歩及ばない。1999年に地球滅亡もの書いてるあたりがいやらしいし。

この人の本はどれをとっても科学に対する信仰心に溢れている。また迷信や、科学への無理解に対する敵意に満ちており、科学的な思考ができない者、しない者、迷信を信じるもの、そのようなものを徹底的に糾弾する。しかし一方で新しい本になればなるほどキリスト教にはごまを擦る回数が増えてくる。アメリカの作家にしてはがんばっているけれど越えられない一線というものはあるのだな(っていうか一時期こいつ確実に踏み越えて何かあったよね)と思わせてくれる。

いちおうこれは三部作らしいから出たら新刊で読んでしまうだろうな。でも映画化されても映画館には行かないというその程度だと思う。「デイ・アフター・トゥモロー」がこけた今、いまさらこういうのがハリウッド映画化されるとも思えないけれど。

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“book:揺籃の星” への7件の返信

  1.  古本やっちゅうのは、なにやら時間の揺らぎを孕んでるような店やな。人を相手に呼吸をしているようでもあるし、・・・気いつけな、ネバーエンディングストーリーの坊やも、古本屋にはまった。

  2. バスチアンは別に古本屋にはまって悪い目にあったわけじゃないじゃない

    でも古本業界は無茶苦茶利益率高いらしいですよ。