第二次スーパー虫っこ大戦 その3

ひとりたりとも逃がさんぞ覚悟しろ!!! 頭はやつらの侵入経路を必死で探すが、そんなことを考えている暇はなかった。発見されたことに気づいたKGはすでに逃走体制に入っている。逃げられるところがあるとは思えないが、ここで対象を生かして逃がすわけには絶対にいかなかった。
音をたてないように、しかし急いで、前線配備されたGジェットプロを取りにいき戻ると、敵はカーテンの下へ隠れるところだった。予備動作で攻撃のタイミングを気取られてはいけない。

カーテンをはねあげざま、Gジェットプロの噴射!噴射!!噴射!!!!

敵は抵抗した。同日トイレで発見されたBGなど比較にならないほどの時間を耐え、文字通り足掻いた。その生命力には恐怖を覚えるほどであったが、やがて静かになり、回収されゴミ捨て場に直行した。

◆  ◆  ◆

 戦闘は終結した。

今回の遭遇は全くと言っていいほど予期していなかったものだ。絶対に安全だと思っていた場所にもっとも凶悪な敵が現れたことで、領土の防衛はより一層難しいものとなった。侵入経路がいくつも想定されたが、昼ころに干された布団に付着して警戒網を潜り抜けたのではないかという説が現在最も有力視されている。

気温の上昇に伴って確実に奴らは侵略してきている。古民家の取り壊し以降街路でG族を見ることが多くなっていたことが今にして思い起こされる。古巣を追われた彼らには帰るべき場所が無い。新しい橋頭堡をこの部屋に築こうとしているとしても、何も不思議はないではないか。こちらもそれ相応の装備をして然るべきである。今回の教訓をふまえ三つの装備増強をした。

コンバットミニまずはコンバットの増強。前回は大4個をキッチン中心に配置したのだが、今回は小12個入りを購入しうち6個を全体に配置した。また外部に通じる風呂場の換気口や屋外のゴミ箱の裏などにも配置した。コンバットについてはおもしろい記述を見つけたので最後に付記しておく。

ホウ酸だんご次に祖母と叔母の「絶対にこれでいなくなる」という強力プッシュにより導入が決定した(叔母に買ってもらいました、ありがとう)「ゴキブリキャップ 通称ゴキブリだんご」。小さなケースが15個入りで、そのシンプルなケースに説得力を滲ませる。商品名にも併記されているようにいわゆるホウ酸だんごで、家庭的な感じがするが一個食べれば致死量という強い毒性もあるので乳幼児やなんでも食べてしまう大人などがいる家では使わないように。

虫コroリそして最終兵器とも言うべき「虫コロリ アース 青つぶin」。これは農薬に使われるカーバメイト系殺虫剤で、プロポクスルという成分が主である。昔から対G戦争を行う際に最も強力であると死の商人の間で噂されていた「バイゴン」と同じ成分である。しかしこのカーバメイト系殺虫剤には黒い噂がつきまとい、使用上は注意が必要なようである。動物の神経系に作用するため飛行機散布時などに風向きや環境によってはパイロットがめまいを起こし墜落事故を起こすという例もあったらしい。発がん性も取りざたされているのでこの粉剤の屋内使用には向かない。しかしアース製薬のアースレッドなどにはこの薬剤が使用されており、基本的にはポピュラーな殺虫剤と言っていいようだ。ちなみに虫コロリはゴキブリ用ではない。ムカデやヤスデなどの不快害虫向けとなっている。屋内で使われることを恐れたのかもしれないが、ゴキブリは地を這う虫ではないので空を飛ばれるとお手上げなのは確かである。
これは屋外で、部屋の周囲に部屋を囲うように散布した。空を飛ばれたら仕方がないが、外からやってくるゴキトロンたちに対する忌避効果を期待している。戸外で見かけるゴキトロンたちは地面にいることが多いので、それなりに効果を発揮してくれるだろう。

つまり今回の増強のポイントは攻撃方式の三重化である。フィプロニルのコンバット、プロポクスルの虫コロリアース青つぶin、そしてホウ酸のゴキキャップ。いずれも名声を勝ち得ている製品であり、それぞれに働いてくれることだろう。またコンバットとゴキキャップで誘引しておいて、さらに虫コロリで忌避するというアンビバレントな設置形態もまた魅力である。外から来るゴキトロンは虫コロリでガードし、屋内に入り込んだものはホウ酸だんごとコンバットで殺虫する。拡大した戦線に対応するにはこうするしかないだろう。

カーバメート剤:プロポクスル原体は白色結晶の固体、水にわずかに溶ける.有機溶媒に可溶。
比較的速効的な効力を示す。ゴキブリに対しても速効的に作用し、殺虫力、残効性に優れる。有機燐剤と同様に、コリンエステラーゼを阻害して殺虫力を示すため、有機燐剤に抵抗性を示す害虫集団には相対的に効力は低い。人畜毒性は比較的高く、ラット経口毒性LD50値は95mg/kg。

調べていたらこれも面白かったのでメモしておく。

抵抗性害虫の出現問題と増えつつある類型外殺虫剤についてピレスロイド、カーバメート、有機リンの三大類型に当てはまる殺虫剤には、害虫の抵抗性獲得という性能面での致命的な問題があります。これは、一世代の時間が短く、繁殖力が旺盛な害虫(昆虫)で、同種の殺虫剤の毒性に耐えて生き残ったものが子孫をつくり、そのような淘汰を繰り返すうちに、その種の殺虫剤に対して抵抗性を獲得するというものです。この変化は遺伝子レベルでの変化であるために遺伝し、気づかないうちに抵抗性の害虫が繁殖すれば、薬剤の使用量が極端に増え、生物的意味でも化学的意味でも、重大な衛生上の問題を引き起こすことになります。よくくん蒸(煙)式の殺虫剤を定期的に使用したり、DDVPプレートを設置していてもゴキブリなどの害虫の侵入が絶えないということがあります。これはこれらの薬剤に頻繁に曝され続けることによって抵抗性を獲得していることのあらわれです。
このような類型にあてはまる殺虫剤に対して抵抗性を獲得した害虫にも高い駆除効果を得ようとして、最近では、いずれの類型にも当てはまらない殺虫剤が使用されるようになり、これまではPCO業者のベイト剤施工用に特化していたのが、現在では一般向け製品にも使用されるようになり、使用の機会が増えつつあります。
それらのおもなものが、フィプロニルとヒドラメチルノン(商品名:コンバット(一般用)、マックスフォース(PCO専用医薬品)など)です。これらを含む製剤は、とくにゴキブリの駆除に使用されています。
フィプロニルは、電子吸引性置換基を多数導入した分子構造をとっていることから、「新世代のDDT」ともいえるPOPs(残留性有機汚染物質)のひとつです。フィプロニルも神経毒として作用しますが、従来の類型に当てはまる殺虫剤とは作用機構が異なることから、抵抗性害虫にも効果が期待できると考えられているようです。
ヒドラメチルノンはミトコンドリアの機能を阻害し、極度のエネルギー不足状態を引き起こさせて死に至らしめるという全く異なる作用機構による殺虫剤です。このような作用は害虫(昆虫)だけではなく、ヒトを含めた他の生物種にも程度の差はあれ、毒性として現れうる作用です。ヒドラメチルノンもトリフルオロメチルフェニル基など、化学的に非常に安定で、(生)分解しにくい分子構造をもっているため、環境中に放出されたり、廃棄された場合には重大な問題を引き起こす可能性があります(詳細はJPCCN-SPDSをご参照ください)。日本の市民化学ネットワーク

・・・これでだめならヒドラメチルノンだな。

しかしともかく、今は降りかかる火の粉を払うのが先決である。
前線を死守し、防衛ラインを突破してくる敵を一匹一匹殲滅していくほかない。
今は難民だが、いずれ彼らも彼らなりの国境を制定するだろう。それまでの辛抱だ。しかしその国境ラインは絶対にこの部屋の中ではありえないというだけのことである。