夕陽を浴びる露天風呂;高峰温泉に行ってきたよ。その3

前回までのあらすじ;キムチと僕は無事標高2000mの温泉宿高峰温泉に着いたものの、天候不順で露天風呂には入れなかった。しかし内湯で楽しんでいると天気はすぐに回復し、念願の露天風呂に入れることになった!ラッキー!露天風呂は宿から50mほど山道を歩いたところにあるという。果たして我々を待っていた驚愕の真実とは!

露天風呂と書いてきたが、よく見ると宿の看板には野天風呂って書いてあるな…違いがよくわからないや。

高峰温泉の露天風呂について、従業員さんから聞いたことをまとめておこう。
この露天風呂は今年2010年の9月にできたばかりで、まだ運用ルールも手探り状態だそうだ。
当初7時から23時までで(内湯は24時間)やっていたのだが、初の冬を迎えて気温が昼間でも氷点下になることがあり、露天風呂のデッキや道が凍り危険ということで気温が氷点を下回ると中止にしているようだ。今回訪問した11月中旬の陽気では、晴れて気温が回復していれば昼前くらいから夕方18時まで入れる、という感じだった。
これから本格的な冬を迎えるので、冬場は雪も降るし外湯は無理かもしれない、というような話を聞いた。露天風呂目当ての人は電話で運用状況を確認しておいたほうがいいだろう。空気の澄む冬、あの風呂に入れたら最高に気持ちいいと思うが…

さて、話を戻そう。露天風呂へのアクセスは内湯からは行けない。
一度服か浴衣を着て、宿の露天風呂用の裏口から出る。露天風呂も男女別だが狭いので、定員は男女とも4名ずつに制限されている。裏口にはクロックス風の履き物と脱衣カゴ、頭にかぶる露天用の傘が男女4つずつ置いてある。カゴがなければ定員いっぱい、という意味。

外に出ると風呂まで50mと説明があるが、そんなにはないと思う。せいぜい30mくらい。ただ不整地の斜面を登るので足元には気をつける必要があるし、もし裏口で服を脱いだりしたら、この時期は酷い目に遭うだろう。外気温は0℃なのだ。

道は不整地とは言えカラマツの落ち葉が敷き積もっており、歩きやすい。仮に凍ったとしてもこの落ち葉であればしっかり歩けるはず。ただ、ぬかるんだら危ないし、雪が降ったらちょっとしたゲレンデだ。やはり、冬は難しいのかもしれない。

小高い丘の頂上に出ると、女ゆ、男ゆと書かれた表札のような看板が掛かっている。そこの灌木を回り込むように入ると、男女に分かれた展望台のようなデッキが現れる。これが、雲上の野天風呂だ。

露天風呂に着いたのは15:29。天候は確かに回復しているが、「雲上の野天風呂」というにはほど遠い。雲が高く、天気としては「曇り」だ。風花のような雪もちらほらと飛んでいる。しかし雲は重くのしかかる雲ではなく、見る間に形を変えていく。下界を覗くと、小諸の町に天使の梯子が降りていた。

湯は内湯と違って熱い。裏口に掲げてあったデータシートには41℃とあった。この気温の中ではとても気持ちがよい。というか、内湯のぬるさだと無理。きびしい。
僕の適温は冬は42~3℃なので、長湯するためには若干温度が低めの湯のほうがよい。個人的にもかなり合った湯温だったようだ。

熱い湯を堪能していると、30分ほどで梯子が上がった。オレンジからくろぐろとした群青へのグラデーションが脳髄を蕩けさせるかのようだった。おそらく僕の身体も、サーモグラフィに映せば火照った胴体からキンキンに冷えた頭へと同じ色を示したことだろう。

内湯に20分くらい浸かっていた上に外湯に30分も浸かったので、身体はかなり暖かく、寒風吹き荒ぶ脱衣所(デッキの上なのでお立ち台で着替えるようなもん)でもさほど寒くはなかった。しかし長湯ができない人は、すぱっと水を拭いてすぱっと浴衣を羽織り、さっさと暖かい館内に戻った方がよさそうだ。

(硫黄分を含んでいるのでそのまま服を着て乾かしてしまうと臭いが残る。結局臭いのせいで寝付けなくて後で内湯のシャワーで洗いに行くことになった。)

部屋に戻るとキムチがいた。「内湯で十分」などとふざけたことを言っているのでリコメンドしまくって外湯に行かせる。このめまぐるしい天気の変わりようだと明日入れる保証はないし、夕陽は今日しか見られない。それに、南に面したデッキから日没が見えるのはこの季節だけだ!

とりあえずタオルだけ持って見に行って、入りたかったら入ればいいと無理矢理行かせたのだけど、キムチはバスタオルを使わない。バスタオルなしであのデッキで手ぬぐいで水を拭くのはかなりヤバい。そう思ってバスタオルを持って後から行ってみると、案の定湯に浸かっていた。おそらく日没の瞬間を堪能できたことだろう。

夕飯は18時から。湯船でも何人かと話したが、黒斑山や浅間山を目当てのトレッキング客が多い。そして、年齢層が高い。だいたい50~60歳くらいだろう。平日ですしね。
料理はこんな山の上でいただけるものかと思うくらいきちんと作ってあり、いちおうアペタイザーから始まるコースになっている。上高地の帝国ホテルだなどとは言わないが、登山宿としての水準を考えれば十分おいしいし、中でも刺身蒟蒻は(僕は奥多摩で散々食べているのに)かなりおいしいと感じた。(翌日食べた信州サーモンの刺身もおいしかったので、翌日ここで食事をしない人は追加注文をしてもよいかも)
あと、持ち込んだ日本酒もうまかった。先日西荻の三ツ矢酒店で購ってきたもので、龍神酒造の黒吟 無濾過生詰め原酒 尾瀬の雪どけ(雄町)(楽天アフィ)。純米ではないが、その分甘すぎないキレが良い。今年は吟醸酒・本醸造が分かる男になりたいね!

元々さほど飲まない親子が日本酒720mlを開けた上、夕食前に缶ビールを飲んでいたため食後一気に睡魔に襲われた。このまま今日は終わるか、と思われたのだが、夜になって雪が降る予想があり開催が危ぶまれていた星空観察会が行われるというアナウンスがあった。トラッキング機能つきの大口径のシュミカセがあり、説明もしてくれるというのだ。見ずには寝られまい。家中からかきあつめた防寒具を装備して観察会に参加した。

望遠鏡は二台あり、でっかい双眼鏡とでっかいシュミカセ。
スタッフさんがふたりがかりで説明してくれる。客はみな酒が入っているからか適当なことを言いながら星を楽しんでいる。
・月面
・木星
・プレアデス星団
・ベテルギウス
などを見たが、下半身の防寒が全然なっておらず、館内と外を行ったり来たりしながら観察会を楽しんだ。
星の見え方は奥多摩程度だっただろうか。ただ薄い雲があったので、条件がよければ天の川も見えるということだった。
ちなみに館内には暖を取るためのガス暖炉と蕎麦茶、五平餅が用意されていた。なんと用意のいい…
30分ほどもすると雲が湧いてきてしまい、鑑賞会は仕舞いとなった。

時刻は21時前くらいだろうか?
その後部屋に戻って少し寝たのだが、午前2時ころ目が覚めた。
前日も2時起きで仕事を済ませてから来たからか、体内時計が変だ。
なぜかe-mobile電波が入った(スキー場のおかげかな?イモのサイトでは微妙にエリア外)のでiPod touchでネットを見たりしていたのだが、ばっちり目が冴えてしまい寝られない。
ふと思いついて電気を消して窓の外を見ると、さっきまで宿を包んでいた雲がない。
星空まで一気貫通、ひょっとして天の川が見えるかも!
そう思うと寝ていられなくなった。

天の川ははなちゃんとガクくんに会いに奄美大島に行ったときに浜に寝転がって見たということは覚えているのだが、泥酔していて見たモノを覚えていないのだ。

先ほどの失敗を活かしてジーパンの下にパジャマ用トレーナーを履き込み、上半身は先ほどと同じ完全防備。ウィンドストッパー用ジャージにPRIMALOFT、フリースのネックウォーマー、コロンビアのWSグローブ、そして秘密兵器の白金カイロ(楽天アフィ)。こいつがあれば零下30度でも発熱する。僕は死ぬけどね。
そうそう、わざわざ香港の電脳街まで買いに行ったFenix LD20(楽天アフィ)も。180lmで目を焼けば、暗闇で熊に襲われても安心だ。

表玄関からさっきの鑑賞会の場所に行こうかとも思ったのだが、露天風呂の眺望が忘れられず、裏口から露天風呂へ登った。

ランプが一灯だけ灯っている。風呂は蓋がされていて、入ることができない。この気温じゃ入れと言われても無理だけど。
小諸市街だと思うが、意外と町の灯りが見える。

そして上を見上げると、星空が。うっすらと天の川らしきものも見える。星空用のカメラ機材は相変わらず揃えていないので、三脚も使わず(車に置きっぱなしだったので面倒で取りに行かなかった)、リモートレリーズでのbulk撮影を206秒行った。

(206秒というのはEXIFに入ってたデータで、特に撮影時に意図したわけではない。寒すぎて我慢の限界がそれくらいだっただけ。)

写真ではわからないがかなり気温が低く、デッキは一面霜に覆われていた。
宿のブログを見たら最低気温は-7℃だったらしい。

急激に暖かいところに入るとカメラのレンズ内で結露してしまうので、裏口でしばしカメラのための時間を取ってから部屋に戻った。
結局その後も寝ることが出来ず、硫黄臭かったので内湯に入ってシャワー浴びたりネットを見たりして時間を過ごしていたが、朝方すこしうつらうつらし、目が覚めると空が白んできていた。恒例の明け方撮影の時間だ。
僕はもう一度しっかりと防寒着を着込み、露天デッキに向かったのだった。「雲上の野天風呂」というのだから、雲海を見なければ気が済まない。
雲海と言えば朝方だ、この機会は逃せない。ということで、つづく